墨彩画 「涼風」 26.0×34.0cm
こんにちは。
墨彩画家でセラピストの桂颯(けいそう)です。
今回は、墨彩画作品「涼風」という題名で、
滝の作品をご紹介させていただきます。
この作品は、水墨画のように見えますが、
墨彩画です。
通常、水墨画で描かれる滝には、
水の部分に胡粉を使うことはあまりありません。
大抵、滝の水の部分は、白く塗り残すか、
最初に「わんぱう」とか「白抜き剤」を用いて、
墨が入らないように処置して、水を白く残して、
描いていきます。
今回の作品では、
水以外の全体に、黄土+胡粉+墨を薄く塗り重ねて、
背景とし、最後に、水しぶきは、胡粉を使って描きました。
私は、昔から、滝が大好きで、
しばしば水墨画で描いてきましたが、
今回は、以前、模写した西郷孤月の「飛瀑」の模写を参考にして、
墨彩画での滝に挑戦してみました。
滝を描く際に、崖や木々まで、
すべてきっちり描きこんでしまうと、
暗くて、重い絵になってしまいます。
私は、「滝」の水しぶきで心を浄化する
さわやかな滝作品に描きたかったので、
重い印象にならないように、
上半分は、水しぶきや霧でぼやける感じに
演出してみました。
さて、今回は、「滝」の参考資料として、
著作権フリーの滝作品を
日本だけでなく、海外の画家の絵画からも集めてみました。
同じ滝でも、画家によって、全く異なる絵になります。
画家は、それぞれ、滝のどの部分に心惹かれ、
どう表現しようとしたか、
絵を見ながら、一緒に学んでいきましょう。
目次
フレデリック・エドウィン・チャーチの滝作品
![](https://keisou11.com/wp-content/uploads/2021/07/3dee4e3c3e5a538fef8a538a42458a7e-scaled.jpg)
「ナイアガラの滝」
フレデリック・エドウィン・チャーチは、
1800年代後半に活躍した、アメリカ合衆国の風景画家です。
ナイアガラの滝の壮大なスケールに圧倒されますね。
見たままの風景をリアルに、丁寧に、丹念に
描くことで、画家が自然から受けた感動が伝わってくるようです。
「ナイアガラの滝」をアメリカ側から描いた作品もあります。
![](https://keisou11.com/wp-content/uploads/2021/07/2850f82e8b7300e62b953af5a0070b42-scaled.jpg)
「エクアドルのコトパクシ山」
夜明けの風景でしょうか?
夕焼けの風景でしょうか?
全体に、赤く照らされた山や湖の風景は、
見たことがない風景でありながら、どこか懐かしく、
胸キュンで切ない。
しかし、澄んだ空気まで感じられる美しい作品です。
葛飾北斎の滝作品
![](https://keisou11.com/wp-content/uploads/2021/07/f5a622b31ff7bed83be1f26f34b0b260-scaled.jpg)
諸国滝巡り「下野黒髪山きりふりの滝」
葛飾北斎は、世界も認めた天才浮世絵師で、
生涯を通して、約3万点の作品を残しています。
北斎の斬新な作品は、ゴッホやモネ、ドガなどの
印象派の画家に多大な影響を与えました。
アメリカの「Life]誌が
「この1000年で最も偉大な業績を残した世界の100人」という
特集を組んだ際に、北斎は、日本人で唯一選ばれるほど、
海外において、高い評価を受けています。
さて、北斎のこの滝の表現は、かなり独創的です。
滝の流れは、まるで、大木の根っこのように描かれ、
水でありながらも、パワフルな生命力が感じられます。
北斎と言えば、「ビッグウェーブ」で有名な、
「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」がありますが、
![](https://keisou11.com/wp-content/uploads/2021/07/0a59227916f08d64ad2f306a0aa53f02-scaled.jpg)
この波も、まるで生きもののように迫ってくるものがあります。
天才北斎の頭の中は、とても凡人の私には、
理解できませんが、
自然に対して、圧倒的な畏敬の念をもっていたのかしらんと
想像します。
横山大観の滝作品
![](https://keisou11.com/wp-content/uploads/2021/07/d73d65208a80f313ce901468c3ce9bd8-scaled.jpg)
曳船
横山大観は、明治、大正、昭和を生きた日本画の代表的な画家で、
輪郭線を使わず描く「朦朧体」(もうろうたい)と呼ばれる技法を
深めたことで有名です。
この作品も、まさに朦朧体で描かれていますね。
朦朧と描かれている遠景の中で、
滝の水しぶきが白く光っています。
また、遠景の朦朧と描かれている風景とは、対照的に、
手前の人物は鮮明に描かれていて、
しかも、船を引っ張る線まではっきり見えます。
題名「曳船」の船の姿がどこにも描かれていないのは、
憎い演出ですね。流石です。
![](https://keisou11.com/wp-content/uploads/2021/07/7f3c5e5de8cad53703174a8f1faa6238-scaled.jpg)
飛泉
「曳船」と同様に、
全体に朦朧と描かれている崖や木々の中で、
滝がうっすら白く浮き上がって見えます。
飛んでいる鳥は、燕でしょうか?
この燕をくっきり鮮明に描くことで
画面が、ピシッと引き締まっていますね。
「飛泉」の主人公は、この燕たちなのでしょうか?
「朦朧体」という表現方法。
とても面白く、勉強になりますね。
川瀬巴水の滝作品
![](https://keisou11.com/wp-content/uploads/2021/07/ad40f64d3091395fcf4cdb09b914e6fd-scaled.jpg)
赤目千手瀧
川瀬巴水(かわせはすい)は、
日本の大正・昭和に活躍した浮世絵師、版画家です。
衰退した日本の浮世絵版画を復興するために、
新しい新版画を確立したことで知られています。
日本各地を旅行し、写生した絵を元に、
日本の美しい風景を叙情豊かな作品に仕上げ、
数多くの版画作品を発表しました。
この作品も、色彩豊かで、焦げ茶色の崖を背景に、
紅葉の赤と滝の水の白さが対比されて、
とても美しい作品ですね。
何枚も重ねて刷って仕上がる版画の技術の高さがうかがえます。
![](https://keisou11.com/wp-content/uploads/2021/07/1864c3abbf1ee4fb9520120e877e84c0-scaled.jpg)
日光湯瀧
ゴーゴーという滝の音が聞こえてきそうな迫力です。
水しぶきや水流、木々や花や岩などの一つ一つは、
シンプルな表現なのに、
画面全体になると、強く訴えかけてくる存在感があります。
まとめ
今回は、
私の墨彩画作品「涼風」をご紹介するとともに、
著作権フリーの素晴らしい滝作品を
集めて、私が感じるところを述べてみました。
日本を代表する画家というのは、
その高い技術といい、感性といい、独創性といい、
人の追随を許さない世界観があり、
とても勉強になりますね。
皆さんは、どうお感じになりましたか?
自分の感性を高め、知識を広げていくためにも、
有名画家の作品は、できるだけ数多く見ることを
お勧めします。
今回は、ここまでです。
最後まで、ご覧くださりありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。