【墨彩画作品集 禅語 放下着】怒りを手放すためには(その1)

こんにちは。

墨彩画家でセラピストの桂颯(けいそう)です。

 

さて、今回は、
禅語「放下着」(ほうげじゃく)について、
お話したいと思います。

 

放下着とは、
「何もかも、すべてを放り出しなさい」という禅語です。

怒りや怨み、後悔や悲しみ、つらい過去も、不安な未来も、
何もかも、放り出し、捨ててしまって楽になりましょう。
という意味です。

「放下着」

なんと、すがすがしく気持ちの良い言葉でしょう!

自分の中に、次々に沸いてくるさまざまな邪念を

いつも放り出し、さっぱりできれば、どんなに楽なことか。

しかし、そう簡単に心を思い通りに動かせないのが、

私たち人間の悲しい性です。

 

皆さんは、これまでに、

怒りの炎に身を焼かれたことはあるでしょうか?

「相手が間違っているのに、何故、

私がこんな目に会わなくちゃならないのか!」

強い「怒り」のために、

眠れない苦しい夜を過ごしたことはないでしょうか?

長い人生、生きていると、

どんな人でも、理不尽な目の一つや二つ、
会っているのではないでしょうか?

できれば、一生、穏やかに平和に暮らしていきたい。

しかし、残念ながら
私たちが、この世に生きている限り、どうしても、

こうした「怨み」や「怒り」に出会うようになっているのです。

悲しいことですが、そうなのです。

そんなときこそ、「放下着」。

この禅語を学び、実践していくのです。

たやすいことではありません。

「言うは易く行うは難し」です。

しかし、何故、「怒り」を手放すことが重要なのか

ということについて、

これから解説していきましょう。

目次

東洋医学的観点では

東洋医学は、古代中国で生まれた2000年の歴史を持つ医学です。

「気・血・水」の流れを良くし、

「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の五臓の働きを整えるという

先人たちが培ってきた長い経験に基づいた独特の理論によって

治療や養生を行います。

西洋医学が、病気やケガなど、体の悪い部分(患部)に直接アプローチして、

手術や薬物で治療を行うのに対して、

東洋医学では、患部だけでなく全身状態を見て、漢方や鍼灸などで治療を行います。

このように、西洋医学と東洋医学は、全く異なる考え方をしています。

どちらがより優れているとかということではなく、

それぞれに得意分野があるので、上手に使い分けると良いと

私は考えています。

原因のわからない不定愁訴といった症状を治したり、

病気を予防する養生法などは、

東洋医学の得意分野と言えるでしょう。

さて、前置きが長くなりましたが、いよいよ本題です。

東洋医学では、

「怒り」の感情が、肝臓や筋肉に悪影響を与えると考えています。

逆に肝臓を病むと、

「イライラ」「怒り」の感情が多くなるといわれています。

怒ると、人は、生理反応として、

筋肉がプルプル震えだし、相手と戦いたくなります。

筋肉を活性化させるために、全身の筋肉内にある老廃物や毒素をいち早く、

肝臓に集め、解毒しなくてはなりません。

適度な「怒り」なら、正常に反応し、問題はありません。

しかし、「怒り」が長期に及んだり、強すぎると、

解毒しきれない毒素や老廃物が、肝臓を傷めてしまうというわけです。

症例1 怒りのために筋肉が痙攣!?

以前、ドラッグストアに勤めていたとき、こんな患者さんに出会いました。

やせて顔つきの険しい方でしたが、

「足の震えが止まらないので、何か薬を出してほしい」と言われるのです。

いきなり、両足を投げ出して、床に座ると、

痙攣している右足を指さすのです。

「これ見て。ひどいでしょう? なんとかならない?」と。

とてもドラッグストアで解決できる問題ではないと思ったものの、

あまりに突飛な態度をとるので、ただごとではないと思い、

「いつ頃から、そうした症状が起きたの?」と尋ました。

すると、義理の弟と財産をめぐり、骨肉の争いをしているとかで、

何年も激しい怒りを感じるうちに、足が震えだしたと言っておられました。

「怒り」が筋肉に症状を起こす典型例だと思いました。

この方は、きっと肝臓にも異変が起きてくることでしょう。

人に対する憎悪は、こんなにも、体に影響を与えるものか

と気づかせてくれた症例でした。

症例2 浮気された方の妻が癌になる?!

ある東洋医学書では、癌は心のしこりから始まると述べられています。

夫の浮気に苦しんだ、ある中年女性の症例です。

ずっと夫を信じて、おだやかな日々を幸せに暮らしていた婦人が、

ある日、突然、夫に裏切られてしまった。

女性は、信じていただけに、どうしても夫を許せなかった。

そしてついに、女性は、顎の癌になり、手術をしたが取り切れず、

最後は壮絶な死を遂げたという症例です。

夫は、その後も長く生き、再婚したとか。

私が、学んだ経絡指圧の創始者である増永静人氏は、

書籍「治療百話」の中で、

妻に何ら落ち度がないと思われる場合でも、

夫が浮気をして、病気で苦しんで死ぬのは、

妻の方が多いと述べています。

道徳的に考えて、明らかに、浮気をしている夫の方が悪いのに、

我慢し耐えている妻の方が病気になるというのは、

人情として、納得のいかないことです。

しかし、

心身のメカニズムを考えるとわかるような気がします。

妻が感じる激しい怒りのストレスは、我慢をすることで、

体に力が入り、そのため血行が悪くなり、流れが停滞する可能性が高い。

つまり癌を誘発する可能性は高くなるということになります。

まとめ

ここまで、読んでくださった方は、

「怒り」という感情が、どれほど自分の心身にダメージを与えるか、

ということをご理解いただけたかと思います。

相手が悪いとか、自分が正しいとか、そんな理屈は関係ないんですね。

相手に向ける心の刃は、自分をも刺してくるのです。

なので、どんな「怒り」も、放下着。

できるだけ早く、心の中から放り出すことが大切なのです。

 

今回は、ここまでです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

さて、次回は、

「怒り」をどうやって「放下着」するか、

その具体的な方法についてご紹介いたしますね。

【墨彩画作品集 禅語「放下着」】怒りを手放すには(その2)

では、またお目にかかりましょう。