【墨彩画参考資料】狩野芳崖を学ぶ

こんにちは。

墨彩画家でセラピストの桂颯(けいそう)です。

 

さて、今回は、

最近、私が最も注目している画家、

狩野芳崖(かのうほうがい)について、

解説したいと思います。

 

芳崖は、狩野派最後の絵師であり、

「近代日本画の父」とも称され、

幕末から明治時代、そして近代への橋渡しをした画家です。

「仁王捉鬼図」 明治19(1886)年

幸い、著作権フリーの作品が3点だけですが、

ありましたので、作品をご紹介するとともに、

狩野芳崖について、解説したいと思います。

 

以前、「墨彩画と日本画はどこが違うの?」

の中で、日本画における「狩野派」の位置づけについては、

説明していますね。

「墨彩画と日本画はどこが違うの?」 〇〇を使うのが、日本画。使わないのが、墨彩画。

 

狩野派は、室町から江戸時代の400年以上にわたり、

時代の権力者、足利家や織田信長、豊臣秀吉、徳川家の

庇護を受け、画壇の頂点で君臨してきた一大流派です。

 

 

しかし、狩野派は、江戸幕府が崩壊し、廃藩置県とともに、

諸大名の藩主と御用絵師との関係が終わり、

絵師たちは職を失い、衰退の一途をたどりました。

多くの狩野派の絵師の中でも、実力者として地位を得ていた

芳崖ですら、例外ではなく、生活は困窮を極めたといいます。

 

では、まず、

狩野芳崖の人生を見ていきましょう。

目次

狩野芳崖の生まれ

1828年、長府藩の御用絵師の家の長男として生まれます。

1846年、19歳で狩野派に入門します。

1852年、25歳で画塾を修了し、藩から30石を給され、

御用絵師となります。

廃藩置県により失業

1871年、江戸幕府が崩壊し、明治維新を迎えると、

芳崖は、藩主からの禄を失います。44歳のときです。

その後、

屋敷を打った金銭で養蚕業や荒物屋を営みますが、

うまくいかず、陶器や漆器の下絵を描くなどして、

しばらくは辛酸をなめることとなります。

しかし、そんな苦境の中でも、

芳崖は、かつて画塾で学んだ雪舟や室町水墨画を見直し、

自習に励んでいました。凄いですね。

確かに、後の作品「寿老人図」などを見ると、

力強い墨線は、雪舟をも上回る迫力があります。

1882年、フェノロサとの出会い

フェノロサは、アメリカ合衆国の東洋美術史家

ですが、日本政府の要請をうけて来日し、

東京大学で政治学や哲学などの講義を行う傍ら、

日本美術の価値を認め、保護してきたという人物です。

 

フェノロサは、芳崖の作品を激賞し、

芳崖を月給20円で雇い、自宅近くに住まわせます。

 

フェノロサは、芳崖に対して、指導を行い、

狩野派を中心とした伝統的な画題と筆法に、

西洋的な遠近法による構図や光の明暗、モチーフの立体表現などを

積極的に取り入れ、新しい日本画を作るという理論を

実践したのです。

このときに、フェノロサの指導のもと、

実験的に制作された作品を以下に挙げますね。

伏龍羅漢図 明治18(1885)年

 

フェノロサは、雪舟に見られるような強い筆力による線描、

つまり、人物の衣文線や山水における山や岩肌の線を抑える代わりに、

色彩を用いて、それらを表現するように指導しました。

確かに、以前の芳崖の作品は、

雪舟の影響を受けて、非常に強い線で描いていましたが、

このころから、作風ががらりと変わってきます。

猫のように、おとなしい龍の姿には、本当に驚きます。

こんな絵、見たことない。

獅子図 明治19(1886)年

かつては、獅子は、想像上の動物として描かれていましたが、

芳崖は、イタリアから来日していたサーカス団のライオンを写生し、

これを元に、本作品を描いたとされています。

仁王捉鬼図 明治19(1886)年

私の大好きな作品です。

なんといっても、この鮮やかな色彩が素晴らしいですよね。

これは、フェノロサがフランスから取り寄せた輸入絵具

ブルシャンブルーやエメラルドグリーンなども使用され、

なんと11回も塗りなおしをして描かれたのだそうです。

やっぱりね。

フェノロサは、この作品を称賛し、生涯を通して、

手放さなかったそうですが、

没後、日本に里帰りしました。

まとめ

狩野派最後の画家、狩野芳崖は、

フェノロサの指導のもと、

伝統的な日本画と西洋画を融合させ、

新しい日本画を生み出していきます。

これが、「近代日本画の父」と呼ばれる所以ですね。

その流れが、今の日本画に継承されているのですね。

芳崖が晩年に描いた作品に、

「悲母観音像」があります。

この作品は、芳崖の絶筆で、完成を待たずして世を去ります。

そのため、この作品には、印や落款がありません。

こんなに美しい観音像を見たことがないというほど、

美しい作品ですので、

ぜひ、ネットなどで調べて、ご覧ください。

さて、狩野芳崖、いかがだったでしょうか?

今回は、ここまでです。

最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

また次回、お会いしましょう。